何も考えてないとき
放課後の図書室。二人並んで座ってる。片耳ずつイヤホン。窓から西日。
ユイ 「ソウタってさ、将来何になるの」
ソウタ 「急だな」
ユイ 「進路希望のやつ、書いた?」
ソウタ 「白紙で出した」
ユイ 「怒られなかった?」
ソウタ 「「考えなさい」って言われた」
ユイ 「考えてないの?」
ソウタ 「考えてる。でも言葉にするとなんか違くなる」
ユイ 「わかる。私もサックスやりたいって書いたけど、サックスで何したいかはわかんない」
しばらく黙ってる。Salvantの声がイヤホンの中で鳴ってる。
ソウタ 「……ユイはさ、サックス吹いてるとき何考えてる?」
ユイ 「何も。たぶん何も考えてない」
ソウタ 「それでいいんじゃない」
ユイ 「何も考えてないのがいいの?」
ソウタ 「うん。何も考えてないけど、ちゃんとやれてる。それって結構すごいことだと思う」
···ユイ 「……ソウタは何も考えてないとき何してるの」
ソウタ 「こうやって音楽聴いてる」
ユイ 「Bobby Mcferrin ↗も声だけでこういうことやってる人いるじゃん。でも全然違う方向で」
二人とも黙る。西日が伸びてる。Salvantの声だけ。曲が終わる。少しの沈黙。ユイがスマホを触って、同じ人の別の曲を再生する。何も言わない。
次にユイとソウタが聴いたのは...
CS
Cecile McLorin Salvant
ヴォーカル — 声が始まった瞬間、空気が変わる
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