待てない人と、
待てるピアノ
居酒屋のカウンター。二人並んでる。BGMは店内に流れてる。
アヤ 「このピアノさ、休んでる時間のほうが長くない?」
ミナ 「言われてみれば」
アヤ 「仕事でさ、余白ってあるじゃん」
ミナ 「デザインの?」
アヤ 「そう。詰め込みたくなるのを我慢して空ける。あれと同じことやってる気がする」
ミナ 「弾かないのが仕事みたいな」
アヤ 「そう。何置くかより何置かないかで決まるやつ」
ミナ 「……それ上司に言いなよ。資料スカスカって怒られたとき」
アヤ 「言ったよ。余白ですって」
ミナ 「で?」
アヤ 「怒られた」
二人で笑ってる。BGMのピアノが、ちょうど間を空けてる。
ミナ 「でもこの人の間って、ほんとに気持ちいいね。待てるんだ」
アヤ 「そうなの。待てるってすごいことなんだよ。Miles Davis ↗もこの人から学んだって言ってたくらい」
ミナ 「アヤは待てないもんね」
アヤ 「うるさい」
ミナ 「LINEの既読無視3分でもう電話してくるじゃん」
アヤ 「それは別の話」
ミナ 「この人みたいに待てるようになりなよ」
アヤ 「……うん。来世で」
マスターがグラスを置く音。
次にアヤとミナが聴いたのは...
AJ
Ahmad Jamal
ピアノ — 弾かないことで、場が動く
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